
人生の分岐点と言っても過言ではないのが『開業』です。
単に『開業』と言っても何から始めれば良いのかわからないのが現実だと思いますがそれで良いのです。
開業する際は皆さん同じ道を通る訳ですが、増店・移転の方は別として新規出店される方は皆初めは素人からのスタートです。
初めは気負いしすぎず、わからない事はまず調べて知識をつけていくところからがスタートになります。
当サイトでは少しでも皆様の『開業』にお力添えできればと思い各フェーズ毎にアドバイスをさせて頂きます。
①,出店費用の準備

増店や移転をご検討中の方は一度経験された事があるので大体の流れはご存知かと思いますが、開業・出店に至る迄に物件探しから契約、内装工事、仕入れ等多額の資金が必要となります。
出店の基盤となる物件契約には各物件に設定された初期費用(保証金・敷金・礼金)に加え、居抜き物件に見られる造作譲渡金・権利金、保証会社加入費用、仲介手数料が必要となり、その後に物件内装工事費用、商品の仕入れと想像以上に支出が嵩みます。
そん中、出店費用の準備には自己資金にて全額負担される方と融資を受け出店費用に当てる方がいらっしゃいます。
勿論自己資金にて全ての支出を補える事に越したことはありませんが、融資をお受けされる方がほとんどなのが現実です。
そこでまず自己資金と融資について説明します。
-自己資金と融資について-

【自己資金はなぜ必要か】
新規事業を行うために融資が得られるのならば、自己資金は必要ないのでは? と考える人もいるかもしれません。
しかし、これから事業を始めようという人が、自分で全くお金の準備をしていないというのはいかがなものでしょうか。
事業を始めるにあたっては、「事業計画」が必要になります。
この事業計画の中では、当然資金計画についても詳細に練られていなければなりませんが、そこに自己資金の準備がないということが記されていたらどうでしょう。
金融機関は事業計画書を見て、その事業の実現性や将来性に対して融資可否を判断します。
自己資金がゼロの事業主から資金の借り入れを頼まれたところで、金融機関は事業への本気度を疑い、断るというのが実情でしょう。
さらに、実際に融資を受ける前から開業への準備は始まっているわけですから、その段階である程度の資金は必要になるはずです。その意味でもやはり自己資金は必要になります。では、どのくらいの金額があればいいのでしょうか。
「2019年度新規開業実態調査」(※)によると、新規開業時の資金調達額の平均は1,237万円で、うち金融機関などからの借入れが平均847万円(約68.4%)、自己資金の平均は262万円(約21.2%)となっています。
政府系金融機関である「日本政策金融公庫」では、「新創業融資制度」を利用する際の要件の一つに「(融資)総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」というものを設定していますが、上記調査結果から見ると、2割以上の自己資金を準備して開業に臨む人が多いと言えそうです。
実際に問題なく融資審査を通過するためには、3割の自己資金を準備されることをお勧めしております。
また、「自己資金」を考えるときに気を付けなければならないことがあります。それは、融資を申し込む際には、「事業に使用される予定の資金」しか自己資金として認められないということです。
つまり貯蓄があっても、家族の生活資金とか教育資金などは事業用の自己資金に含めることができないということです。
自己資金は、基本的に貯蓄を積み重ねたものが金融機関では認められます。
計画性をもって積み立てた実績が、事業経営者の資質として評価されると言われています。反対に、同じ金額でも一度に口座入金したものは自己資金としては認められません。
これは融資を受けるためにそのときそろえた一過性の金銭だと判断されるからです。
ただし、金銭でなくても自己資金として認められる場合があります。
開業の準備として事業に必要な物品などをあらかじめ購入した場合は、その金額分が自己資金として認められる可能性があるのです。
これを「みなし自己資金」と言います。
いずれにしても、事業計画に説得力が備わるだけの自己資金と計画的な準備が必要であることは確かでしょう。
※出典:日本政策金融公庫 総合研究所 「2019年度新規開業実態調査」~アンケート結果の概要~ (2019年11月22日)
【援助による資金増額】
起業に際し、親や親族から資金援助を得られることもあるでしょう。
資金が増えるという点ではとてもありがたいことですが、融資を申し込むときには援助の形に気を付けなければなりません。
例えば、日本政策金融公庫では、援助された資金が返済の必要がある借入金という扱いなら自己資金として認めない、ということがあるからです。
この場合、自己資金として融資を受けたいのならば、「贈与」という形をとる必要があります。
ただし、贈与にすると金額などによっては贈与税がかかってくるので、こちらもよく考えておく必要があります。
「日本政策金融公庫」の融資制度を利用する
「日本政策金融公庫」の融資制度を利用する
民間金融機関による融資が難しい、実績のない新規開業資金について、積極的に貸し出す方向で支援してくれるのが、政府出資によって設立された「日本政策金融公庫」です。
中でも多くの事業主が利用しているのが「新創業融資制度」です。
無担保・無保証人など、融資条件のハードルは低めに設定されていますが、事業計画や返済計画等、きちんとしたものを提出する必要があるのは民間金融機関と同じです。
【利用条件】
新創業融資制度を利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
大きく分けて、「創業の要件」「雇用創出などの要件」「自己資金の要件」の三つの要件があるので、利用を考えるならしっかり確認しておきましょう。
1.創業の要件
新たに事業を始める、もしくは事業開始後、税務申告を2期終えていないこと
2.雇用創出などの要件
雇用の創出を伴う事業、技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業、過去に長年勤務した業種と同じ事業(6年)、など
3.自己資金の要件
創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使うための資金)が確認できること
【融資限度額】
融資には限度額が定められており、最大3,000万円まで(うち運転資金1,500万円)となります。
これはあくまでも上限額であり、審査の結果によって金額は変わってきます。一般的には、自己資金額が多く事業計画がしっかりと立てられていると有利だと言われています。
【新創業融資制度の特徴】
新創業融資制度の特徴は、何と言っても担保や保証人がなくても融資が受けられることです。
起業を支援して日本経済を活性化していこうという、国の政策に沿った経営方針で、起業に際して必要な設備資金・運転資金を提供します。
また、融資申請の書類を整えて担当者との面談が済んでから審査結果が出るまでの期間が、通常の場合で二週間程度と短めなのも特徴でしょう。
このように、日本政策金融公庫の新創業融資制度は、比較的借り入れしやすい融資制度ですが、堅実な事業計画をしっかりと練り上げ、現実的な返済計画を提示する必要があります。
営業の許認可が必要な業種は、許認可が下りないと融資実行されない場合があるので、対象となる業種については事前に確認しましょう。
また適用要件や金利などは変更されることがあるため、最新情報の確認も必須です。
「制度融資」を利用する
「制度融資」とは、各地方自治体と民間金融機関、信用保証協会が連携して企業融資を行う制度です。
融資を行う金融機関に対して、自治体が金利負担や預託などを行い、保証協会が保証を行う仕組みとなっています。
【制度融資の特徴】
制度融資は、まず新規事業資金が借りやすいというのが最大の特徴です。
例えば、企業を退職して個人で商売をする場合、経験も実績もないので、その事業の継続性・将来性が不透明なのも事実ですから、一般的には金融機関はなかなか融資に踏み切りにくいというのが実際のところでしょう。
しかし、社会の活性化のためにセカンドキャリアを支援することは、高齢化が進む中ますます必要になってきます。
その意味で自治体が制度として設けている制度融資は、審査の基準を柔軟にして、個人事業主に対しても広く融資が得られるようにしています。
また、借入金利が低いということも特徴でありメリットです。
これも上記の支援方針を前提としているので、高い金利を課して利用者の事業継続が厳しくなるようなことを極力避けるという、基本的な趣旨によるものでしょう。
ただし、金利の設定は各自治体の制度ごとに異なりますので、それぞれに確認が必要です。
借入資金の返済に際しては、「据置期間」が長いということも特徴の一つです。「据置期間」とは、借入元本を返済せずに金利分だけを支払う期間のことです。
この期間が1年程度まで設定できることが多いので、資金繰りが不透明な開業当初においてゆとりを持った返済計画が立てられます。
一方、審査期間が長め(2カ月程度かかることもある)、自己資金要件の準備割合が高い(融資額の50%ということもある)、連帯保証人が必要な場合が多い、ということは、デメリット的な特徴として挙げられますので、合わせて認識しておきましょう。
【利用条件・融資限度額など】
自治体が行う制度なので、各自治体の管轄内で事業を営む事業主・企業が対象になります。
条件の詳細は自治体ごとに異なります。
融資限度額についても自治体ごとの設定内容によります。
業種や事業規模によって変動設定されている場合もありますので、対象地域の制度内容を確認しましょう。
2,物件探し

次に希望にあった物件を探す作業が始まります。
当サイトや他社様のサイトを確認し、①ネット掲載中の物件から情報を集める方法と、②希望地域付近の不動産に足を運び担当者に意向を伝えて一緒に探して頂く手段があります。
①については情報の入手先サイトが募集中のみの掲載をしっかり行っているかの確認が必要になります。
中には成約済の物件を掲載していたり募集のない物件を掲載しお客様を呼び込む方法(誇大広告)を行うサイトも存在します。
誇大広告は違反行為になりますのでそういった行為を見受けられた際は通報されることをお勧めします。
②は自身の時間と足を使う方法となります。
出店候補地に近い不動産を選ぶことが近道となるのでまずは何社か希望エリアに近い不動産をピックアップして伺う事をお勧めします。
良い営業担当と出会う事ができれば最善の方法となりますが、中には無知な担当と出会うこともあるので根気良く時間を使う事が必要となります。
希望物件の条件を定める際、特に注意しなければいけない点は『立地』と『初期コスト』です。
良く賃料についてシビアな計算をされる出店希望者様もいらっしゃいますが、『立地』あっての賃料になるので逆に抑えすぎると集客が取れない物件を選ぶ事となります。
自身が想定した賃料より高い金額の物件と契約することは勇気のいる決断となりますが、初期の勇気が今後の営む事業に追い風となる可能性もある事を考えれば少しは勇気が出るかもしれません。
上記踏まえ、まずは希望立地を定める作業からスタートとなります。
単に『立地』といっても業種や目指す事業プランにより最適なものは変わってきます。
『初期コスト』についても当初の予算内で物件を探していくことが基本になりますが、
より良い条件で契約できるよう少し高い条件のものを交渉してみるのも一つの手段です。
特に事業用賃貸物件は保証金や礼金、造作譲渡金といった高額な費用が必要となります。
交渉をすると言っても貸主と借主の希望条件を上手く折り合いを付け、お互いWin-Winの関係になるようお話を進めていくことが必要になります。
上記2点を含めても物件ん探しに置いては良きエージェントと出会う事が何よりも大切になります。
出店をお考えのお客様はご自身で勤勉に知識をつけて物件探しを始められますが、物件探しの際に最善の物件を選ぶことは特に難しい作業です。
仲介手数料を支払うことに抵抗がある方も昨今増えておりますが、事業用物件に関しては良いエージェントと巡り合い好条件の物件を見つけ出すことが最善の手段になる事もありますので一度ご相談されることをお勧めします。
3,契約

物件が定まったら次に契約を行います。
賃貸借契約書には普段見慣れない法律用語が並びますので、中には目を通さずに契約される方もいらっしゃるかもしれません。
仲介業者を介した賃貸借契約では宅建業法に準じて重要事項説明が義務付けられており、契約書の記載事項をきちんと口頭で宅建士から説明を受ける機会が生じますが、貸主借主間の直接契約では宅建業法が適用されない為借主に不利な契約を締結してしまうリスクも生じます。
賃貸借契約書は貸主が作成するパターンが多く、第三者の確認がなければ貸主に有利な契約書になってしまう傾向にあります。
きちんと貸主借主双方の立場を守る為の内容になっているか確認を行った後契約することが最も重要です。
ここでも仲介業者を介した契約の方が後々のトラブルを考えるとリスクヘッジになるのでメリットが多く生じると感じて頂けるはずです。
事業用物件の契約は住居用物件の契約より複雑な内容になっている事が多く、細心の注意と経験が必要になりますので、事業用仲介業務に秀でたエージェントに相談を行い十分な知識の元契約を締結することをお勧めします。